レッドベリル=レッドエメラルド
レッドベリルは鉱物学的に分類すると、緑柱石(ベリル)に属します。同じベリルに属する石としては、最も有名なのがエメラルドですが、その他にもアクアマリンやモルガナイト、ヘリオドールなどが挙げられます。
ですがどの石ひとつをとっても鮮やかに煌めくレッドカラーを有するものはなく、ルビーのレッドとは一味違う、どこかエキゾチックで深いレッドベリルを、同じベリルであるエメラルドの名称を用いて「レッドエメラルド」と名付けられました。
何故「レッドエメラルド」と呼ばれることになったのか?
0.5カラットを越える大きさの石がほとんど取れないレッドベリル。ジュエリーとしての採算が合わないため、数少ない産出国であるアメリカの鉱山は全て閉山したといわれていました。そのため、かつて採掘された石が取引されているのみでほぼコレクターズアイテムとなっていましたが、近年、ユタ州のワーワー山脈でのみ、ごく僅かながら発掘されています。
このようにあまりにも希少性が高く、その存在を知らない人も多いため、多くのジュエリーショップが、「レッドエメラルド」という名前を使い、その認知を広めていったといわれています。
レッドベリルの産地について
レッドベリルは流紋岩と呼ばれる火成岩の中で結晶しています。レッドベリルはそんな流紋岩の内部や空洞部分の裂け目に沿ってマグマが冷やされた時、火山活動によって排出していた高熱ガスや水蒸気が結晶化して、奇跡的なレッドカラーのベリルとなりました。
ここで興味深いのは、流紋岩は世界中で発見されているものの、稀にトパーズやガーネットが発見される程度で、グリーンのエメラルドをはじめとするベリルの鉱物が発見されたという記録は残っていません。それが何故か、アメリカのユタ州とニューメキシコ州の一部の流紋岩にのみ、レッドベリルが含まれていたのです。それも鉱物の標本として提供される程度であり、ジュエリーの用途としては、ユタ州のワーワー山脈でのみ、ごく僅かに発掘されています。
「レッドエメラルド」のネーミングについて
この赤いベリルを「レッドエメラルド」と称して良いのか、実は関係者の間では肯定派と否定派に二分され、今でも論争が沸き起こっています。
もともと「エメラルド」は「緑」を意味するペルシャ語が語源といわれており、反対派のなかには「緑」を有しない石に「エメラルド」を使うことがおかしいと主張しています。それに対して肯定派は、「サファイア」の語源もギリシャ語で「青」を意味している。それなのにピンクサファイア、イエローサファイアという名称が使われているのだから、「エメラルド」という名称を応用してもかまわないという反論を展開しています。
そんな中、唯一の産地であるアメリカの宝石業界関係者は、この色石の希少性をアピールするためにも、「レッドエメラルド」が相応しいと主張。現在では多くのジュエラーが、この鮮やかなレッドカラーのベリルを「レッドエメラルド」という名称で呼んでいます。
レッドベリルの希少性と今後について
レッドベリルの中でも特に評価が高くなる深紅に近い色の濃い石となると、産出量が絶対的に不足しています。現在、レッドベリルが産出されるのは、ワーワー山脈からのみという現状で、それも50年程度で鉱床は尽きるとの観測もあります。
その一方でジュエリーに仕立てられたレッドベリルは、ルビーのレッドとは異なる、深い落ち着きのある色合いに輝き、それは小さなメレサイズの石でも、パヴェデザインなどに仕立てることで、愛らしく美しいジュエリーとして多くの女性を魅了しています。
こうした状況をみると、今後本格的に世界の市場に流通した際、パライバトルマリンのような運命をたどることが予想されています。その理由として、①産出されるのが1カ所のみという希少性、②他に類を見ない色合いを持っている点、③産出が短い歴史で終わると予想されている点、このようにパライバトルマリンとの共通点が多く、パライバトルマリン同様に価値が下がらず、価格が上昇し続けると、多くのジュエラーが口をそろえています。
京セラのレッドベリルへのこだわり
レッドベリルの放つ美しいレッドカラーは、クロムベースのベリルにマンガンが含まれることにより、奇跡的に生まれています。そのため、マンガンの含有量によりややラズベリー色を帯びているものや、紫がかったレッドカラーのもの、ピンク色に近い薄い色のものなどがあります。
そもそもの絶対数が少ないレッドベリルですが、京セラでは長きにわたる鉱山主との関係性により、最も評価されている深紅のレッドカラーのレッドベリルのみを厳選させていただき、商品化に成功しています。現在産出されているのは1カ所のみといわれているレッドベリル。この希少な深紅の輝きを貴方の目でお確かめください。