6月の誕生石:パール(真珠)

永遠の幸せを約束する宝石

6月の花嫁はジューン・ブライドと呼ばれ、幸せになれると言われています。
誕生石は、永遠を約束するように美しい丸いフォルムのパールです。特にパールをつなげたネックレスは、冠婚葬祭などさまざまなシーンやファッションに溶け込み、首元に品を与えてくれます。私たち日本人にもなじみのあるパールの魅力を、改めて探っていきましょう。

古代ローマのパール、東洋のパール

日本をはじめ、世界のさまざまな国で愛されているパール。宝飾品や飲み薬として、紀元前から使用されてきたという記録が残っています。

たとえば、古代エジプトの女王・クレオパトラのエピソードは有名です。
あるとき、蜜月だったローマの軍人・アントニウスを喜ばせるために、彼女は豪華な宴を開きます。
しかし、美食に慣れたアントニウスにとって宴は退屈なもので、その顔に失望の色が浮かんでいることに気づきました。
そこでクレオパトラは、酢の入ったグラスの中に、自らが身に着けていた真珠のイヤリングを投げ入れ、「ローマとエジプトの繁栄のために!」と乾杯し、飲み干しました。天然のパールは当時から非常に高価だったため、これにはアントニウスも大変驚き「私の負けだ」と声を上げたと言われています。

一方、古代中国では、中秋の名月の夜、水面に浮かび上がった貝が殻を開いて月の光を受け、パールが生まれると考えられていました。
また、古くからパールの産地として有名だった日本では、その独特の輝きから眼病薬や解毒剤としての効能も信じられていたといいます。海の力が作り出した宝石に、人々は神秘的な力を感じていたのでしょう。

パールが生まれるまで

以前は日本でも多く獲れていた天然パールですが、美しく丸い形のものは大変稀少なものになりました。
その一方で、現代では養殖技術が進歩し、安定した収穫が可能になっています。パールの養殖にもっとも多く使われている貝(母貝)はアコヤガイです。
日本では主に愛媛県の宇和海、三重県の英虞湾、長崎県の対馬、熊本県の天草の4か所での養殖がさかんで、国産パール全生産量の90%を占めています。

下記のような工程を経て、養殖のパールは作られています。

1.母貝の育成

天然の母貝が不足しているため、人の手で母貝を育てます。
優れた母貝を得るために、貝殻の内面の色が美しい母貝、殻の幅が厚い母貝を選び、人工採苗します。大きくなるよう、およそ2年かけて育てます。

2.核入れ手術

成長した貝の体の中に、ピース(外套膜のかけら)とパールの核を挿入します。この手術は高度な技術が必要です。

3.手術貝の養育・管理

核入れ手術が完了したらカゴに入れ、沖合のイカダに吊り下げます。
パールを取り出すまでの約2年間、カゴや貝の掃除を行ったり、赤潮や台風の被害を受けたりしないよう大切に育てられます。

4.浜揚げ

いよいよ貝からパールを取り出す瞬間。イカダからカゴを引き揚げて、アコヤガイを取り出します。
ナイフで貝柱を切って貝殻を開き、貝の身を剥きます。粗塩と水を入れた珠みがき機で真珠の表面をみがいて水洗。良品の真珠だけを集めて浜揚げは完了。ネックレスや指輪などのジュエリーに加工されて、私たちの手に届きます。

個性豊かなパールたち

アコヤガイ以外にも、いくつかの種類の貝でパールを作ることができます。たとえば、高級食材のアワビもその一つ。ニュージーランドではアワビを使った「ブルーパール」の養殖が行われています。
見慣れた白いパールではなく、ブルーパールは青、緑、紫、ピンクなどが幻想的に交じり合い、独特の光沢があるのが特徴です。
年に1000個程度しか獲れないということもあり、一粒でも高額になります。

その他、大変珍しい例として、カキやホタテ、ハマグリなど、私たちにもおなじみの貝からもパールが獲れることがあります。
もちろん狙ってできるようなものではないので偶然の産物ではありますが、まるで海からのちょっとしたプレゼントのようにも思えます。

パールのお手入れ方法

洋服との組み合わせも幅広く、着用の機会の多いパール。身に着ける頻度が高い分、日々のお手入れを丁寧に行いましょう。

普段のお手入れ

・着用後は、その日のうちにお手入れ専用のクロスなどを使って汚れを拭き取りましょう
・デリケートな宝石なので、高温、多湿、乾燥、直射日光はもちろん、防虫剤も避けるようにしましょう。
・硬度が低い宝石のため、他のジュエリーとぶつからないよう、パール専用のケースに入れるか、または仕切りのついたジュエリーケースで保管しましょう

着用時の注意点

パールのジュエリーを着用した状態でヘアスプレーや香水、日焼け止めなどを使用すると、パールの輝きを損なう原因になります。
化粧品類が極力付着しないよう、ヘアセットなどの準備を終えてから、最後に着用するようにしましょう。

ネックレスの糸のお手入れ

ネックレスをつなぐ糸は、経年劣化で切れやすくなります。
2~3年を目安に、ジュエリーショップなどで交換・メンテナンスをしましょう。
糸の替え時を簡単にチェックする方法は、留め具の部分をつまんでまっすぐ下に垂らすこと。目安として3~4mmほど糸が見える場合は、早めの取り替えをおすすめします。

「人魚の涙」とも呼ばれ、その一粒一粒に広大な海の物語が閉じ込められているパール。身に着けるだけで、母なる海の恩恵を受けたような安らぎ、そして凛とした女性らしさを与えてくれます。

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