誕生月を象徴する宝石のことを「誕生石」と呼びます。自分の生まれた月の誕生石を身に着けると、宝石の持つ力が持ち主に幸運をまねくと考えられ、現代でも誕生石は多くの人に親しまれています。
誕生石のはじまりについてはいろいろな説がありますが、そのひとつに聖書の中にも登場するカルデアの国の占星術があります。この占星術では12の星座にそれぞれ神様を配置し、その12の神様のエンブレムとしての宝石が、今の誕生石につながったと考えられているのです。
古代から現代へとつながっていった誕生石。一つ一つの誕生石に込められた物語にふれることで、宝石をより身近に、大切なものに感じられるはず。12の誕生石が持つ神秘的な世界へご案内します。
1月の誕生石は、ザクロの実に似た形で産出されることから和名「ザクロ石」と呼ばれるガーネット。
含まれる成分によってさまざまな種類に分類されるガーネットのうち、代表的なものを一つずつご紹介します。旧約聖書の『ノアの方舟』でも船の進むべき道を照らし続けたとされ、その宝石言葉は「貞操」「忠実」。その言葉を象徴するような、ドイツの文豪・ゲーテに愛された女性ウルリーケの一途な愛情を感じるエピソードもご紹介。いつまでも希望を捨てず、愛情深い人でいたい方にこそ身に着けていただきたい宝石です。
献花・献杯で浄化をする月とされる2月の誕生石は、「紫水晶」という和名で呼ばれるアメシスト。日本では古来より「紫色は高貴な色」として捉えられてきました。
アメシストの由来となったのは、ギリシャ神話に登場する少女・アメシストのお話。彼女の身に降りかかった悲しくも美しい運命とは? その物語を紐解いてみましょう。かのレオナルド・ダ・ヴィンチも「アメシストは邪悪な想念を霧散させ、知性の働きを活発にする」という言葉を残した紫色の宝石。その高貴な輝きで身に着ける人に品と美しさを与えてくれます。
春の息吹を感じ始める3月の誕生石は、海水のように美しい水色の石・アクアマリンです。
実はエメラルドと同じベリルという鉱物でできており、その中の淡いブルーに輝くものが「アクアマリン」と呼ばれています。その名前から、石が持つストーリーは海に関わるものが多くあり、アクアマリンは航海の安全・海難防止のお守りとなっているのです。実は日本でもアクアマリンが採れるところはありますが、残念ながら流通はしていません。爽やかな色とロマンチックなエピソードを持つアクアマリン、男性へのプレゼントにもおすすめです。
4月の誕生石であるダイヤモンドは、憧れのジュエリーとして不動の人気を誇る宝石です。
その歴史は古く、紀元前にはインドで多く発掘されていましたが、インドでは長い間研磨されないまま使用されていたのだとか。果たしてその理由とは? そしてダイヤモンドの価値を評価する「4C」の基本解説や、稀少性の高いピンクやブルーのダイヤモンド、ダイヤモンドに魅せられた歴史上の人物や著名人のエピソードもご紹介します。生命が芽吹く春、世界中の人々を魅了するダイヤモンドは、より一層美しく輝いて見えることでしょう。
5月は新緑の季節、誕生石は緑色に輝くエメラルドです。
3月の誕生石アクアマリンと同じく、ベリルという鉱物からできています。近年ではコロンビア産のものの人気が高く、他の産地と比べて色に違いが出るのが特徴的です。内部に傷のない石は滅多に産出されないため、その傷を隠して石を美しく見せる「エメラルドカット」という研磨方法も生まれました。絶世の美女といわれるクレオパトラや、「暴君」の異名を持つローマ帝国第5代皇帝ネロをも魅了したエメラルド。その鮮やかなグリーンは見る人に安らぎを与えてくれます。
6月に結婚する花嫁はジューン・ブライドと呼ばれ、幸せになれるといわれています。そんな6月の誕生石は、永遠を約束するように美しく丸いフォルムのパール。
パールが貝の中で育つことはよく知られていますが、そもそもどのようにして生まれるのでしょうか? そのメカニズムを解説します。さらに、世界各国で採取される個性的なパールをご紹介。アワビやカキ、ホタテ、ハマグリなど、おなじみの貝から採取されることも。梅雨明けが待ち遠しいこの季節、1珠のパールに込められた広大な海の物語に、思いを馳せてみませんか?
輝く太陽が似合う7月。誕生石は真っ赤なルビーです。
実はサファイアと同じコランダムという鉱物で、その中で特に真っ赤なもののみがルビーに分類されています。その神秘的な色から、護符としてのパワーが強いといわれているルビー。「石には炎が閉じ込められていて、水の中に入れると沸騰する」など、数々の伝承をご紹介します。また、ルビーに関するちょっとした雑学も。ふりがなのことを「ルビ」と呼ぶのは、ルビーが語源になっています。明治時代に伝わったこの言葉、そこには文明開化の一端を感じるユニークな由来がありました。
宇宙の隕石の中にも含まれるため、「太陽の石」と呼ばれる8月の誕生石・ペリドット。
火山岩の中で生まれ、日本でも火山の近くにある海岸や湖で採掘されています。かつて存在したといわれている幻の島「トパゾン島」で発見されたトパーズも、近年の調査で実はペリドットだったことがわかっています。「持ち主の色欲をなだめ、狂気・発作を鎮める」「その鎮静作用で浮気防止や夫婦円満につながる」と考えられているペリドット。「身に着けることでお互いを輝かせる」という意味合いも持つため、パートナーとお揃いで身に着けたい宝石です。
9月の誕生石はサファイア。
コランダムという鉱物のうち、真っ赤なものはルビー、それ以外はサファイアに分類されています。特にブルーサファイアはもっとも価値があるといわれ、古代ギリシャや中世では「目の病を治し、人々を悩みから救う力が宿る」といわれていたほど。実はさまざまな色調があり、青以外の色を示すものをまとめて「ファンシーカラーサファイア」と呼びます。童話『幸せの王子』で王子の瞳がサファイアでできていたように、サファイアは慈愛や誠実さを表します。爽やかな青空に秋を感じる、今の季節にぴったりの宝石です。
欧米では収穫祭が行われる季節。「歓喜、安楽、悲哀を克服して幸福を得る」という意味があるオパールが10月の誕生石です。
「プレシャス・オパール」と「コモン・オパール」の大きく二つに分けられ、さらにさまざまな色に分類されるオパール。その特徴を一つずつ見ていきましょう。さらに、オパールといえば美しい虹色の輝き(斑)が特徴的。その色彩が生まれる仕組みを解説するほか、オーストラリア南部に位置する世界最大級のオパール産地・クーパーペディで働く人々の様子もご紹介。神秘の輝きを放つオパールの世界に浸りましょう。
「ポケットに入れておくだけで太陽の恵みが得られる」といわれているトパーズが11月の誕生石です。
「黄玉」とも呼ばれ、かつては黄色い宝石はすべてトパーズと呼ばれていました。実は、トパーズは本来無色透明の結晶。黄色以外にもさまざまな色の種類があるのは、光や熱の影響で変化しやすいという特徴があるためです。明治から昭和にかけて活躍した詩人・高村光太郎の詩集『智恵子抄』では、病床に付した妻に捧げる悲しみと慈しみに包まれた詩の中に、「トパアズ色の」という表現が登場。儚くも美しい存在感を放っています。
冬の訪れを感じさせる、深い青色のタンザナイトが12月の誕生石。
1967年にタンザニアで発見され、「タンザニアの夜」を表すような色であることからその名がつけられました。多色性という性質があり、見る角度によって結晶の色が、青、紫、灰色などに変化するのも特徴的。落ち着いた青を基本としながら違う色に輝くという点から、さまざまな将来の可能性や想像力を示し、産地のアフリカでは「長期の不幸から脱するパワーを持つ」ともいわれています。まだ歴史の浅いタンザナイト、その新しい魅力を最初に見つけるのはあなたかもしれません。